たった一つの大切なモノ…無くしたくない。
失いたくない。
だから私から離れるのです。



















<Lose Love>



















「彼方に着いて行けない」






私達が付き合い出したのは中2の初夏。
2人とも部活の練習で学校に居て、水飲み場でばったり会った。
話もした事がなくて、何か言うべきか迷ったけど私からは何も言わなかった。
同じクラスでもないからただのファンだと思われたくなかったから。
私は未だ彼方を知らないのだから。










「何?急に」
驚いた顔してくれるんじゃないかって淡い期待をしてた。
試した訳じゃないけどそう期待してた。

「私、好きだよ」
そう言っても私の言葉の半分も彼方は気持ちを教えてくれない。
一粒の気持ちも心も私にはくれない。










「ねえ」
意外にも声を掛けて来たのは相手から。
何を話したかって聞かれても内容なんて殆どなかった。
自分達の部活の練習量とか何処まで行けそうかとか。
私は凄く楽しかった。









「夢を見てるの」
長い長い夢は眼を覚ますのも、眸を開けるのも億劫になる。
この暖かい場所に居たいと。
出来る筈もないのに。

「夢を見せてくれたのは彼方だから」
何も何もない。
もうシアワセな夢は見れないけど。

「彼方の気持ちを教えて下さい」
最後に私からの我が儘を。











「たのCー」
「ホントだね」
懐かしい思い出。
ただ話せた事に喜んで、それだけで良かった頃。
今はもうそんな事は出来ない。
此からも…。

「気、合うね」
そう行って来たのも彼方。
全部全部彼方がくれた。
彼方から貰ったのに。
今じゃその1つもくれない。
持ってるのは前にくれたモノだけ。

「芥川君と居ると楽しい」
心から思ったの。
そう。
楽しいと。











「俺、好きだよ」
たんたんと話す彼方は何も見せてくれない。

「ありがとう」
でも、それだけで十分。
私の我が儘に付き合ってくれた事。
最後に教えてくれて。

「今もね」
「…うん、けどそれは私だけに向けられた好きじゃないから」
今だけは泣いても良いですか?
失恋は痛いです、とても。












「俺と付き合わない?」
「誕生日オメデト」
「可愛Eー」
「好きだよ」
「ありがとう」















そんな言葉ばかり頭に響くのです。
もう2度と聴けないのに。
彼方の声が…。
言葉が。
消えないのです。























ジロー君です。
ジロー君は何となく付合ってても彼女の方が心が遠くなったとか感じるのでは?
って思います。
誰に対しても優しくて、誰に対しても平等で。
そんなジロー君を好きになって、解らなくなって悩む。
そんな気がします。
誰かに対しての執着とかあんまりなさそう。
感想下さい。